2026年4月から本格実施された「こども誰でも通園制度(乳児等通園支援事業)」。保護者の就労要件を問わず、0歳6か月から満3歳未満(満3歳に達する前日まで)の保育所等に通っていないこどもが月10時間まで利用できる制度として、多くの認可保育園で導入が進んでいます。
しかし、いざ始めてみると「会計上の処理はどうすればいいのか」「延長保育と同じように処理して大丈夫なのか」と悩む声が現場から多く聞かれます。
この記事では、こども誰でも通園制度を導入した(またはこれから導入する)
社会福祉法人の保育園が押さえるべきサービス区分の新設と区分経理の実務を、
今日から取り組めるアクションとともに解説します。
まず理解しておきたいのが、この制度の法令上の位置づけの変化です。
| 年度 | 位置づけ | 根拠 |
|---|---|---|
| 令和7年度(2025年度) | 地域子ども・子育て支援事業 | 子ども・子育て支援法 |
| 令和8年度(2026年度)〜 | 給付事業 | 子ども・子育て支援法(改正後) |
2025年度までは市区町村の「地域子ども・子育て支援事業」として試行的に実施されていましたが、2026年度からは国が一律で保障する「給付事業」に格上げされました。
この変更が会計処理に大きな影響を与えます。なぜなら、延長保育や一時預かり事業で使われている「簡便法」の適用可否が変わるからです。
「延長保育や一時預かりは保育所本体と同じサービス区分でまとめているのだから、こども誰でも通園制度も同様でよいのでは?」と考える方は少なくありません。
しかし、結論から言えば同一サービス区分にまとめることはできません。
社会福祉法人会計基準の運用上の留意事項(課長通知)第5イ(イ)には、「地域子ども・子育て支援事業」について、保育所本体と同一のサービス区分で処理できる簡便法が定められています。延長保育事業や一時預かり事業はこの規定に基づいて同一区分で処理されています。
ところが、こども誰でも通園制度は2026年度から「給付事業」に格上げされたため、「地域子ども・子育て支援事業」を対象とする簡便法の適用範囲外となりました。
さらに、内閣府令「特定乳児等通園支援事業の運営に関する基準」第31条において区分経理が法令上義務づけられています。
つまり、会計上の区分経理は「やったほうがよい」ではなく「やらなければならない」ものです。
こども家庭庁Q&A(令和8年度第1版)No.3では、この点について明確に回答されています。実務上のポイントを整理すると以下のとおりです。
保育所と同じ施設内で一体的に実施する場合、拠点区分を新たに設ける必要はありません。社会福祉法人会計基準の運用上の留意事項(課長通知)第4(2)に基づき、既存の拠点区分の中で処理できます。
一方、サービス区分は必ず新設が必要です。具体的には、既存の保育所拠点区分の下に「乳児等通園支援事業」のサービス区分を追加します。
会計基準上の構造をイメージすると、次のようになります。
| 階層 | 区分名(例) | 対応 |
|---|---|---|
| 事業区分 | 社会福祉事業 | 変更なし |
| 拠点区分 | ○○保育園 | 変更なし |
| サービス区分① | 保育所運営事業 | 既存のまま |
| サービス区分② | 延長保育事業(本体と同一区分で処理) | 既存のまま |
| サービス区分③ | 乳児等通園支援事業 | 新設 |
サービス区分の新設とあわせて確認しておきたいのが、定款変更の要否です。こども家庭庁が公表した「乳児等通園支援事業(こども誰でも通園制度)に係る社会福祉法上の事業区分等について」によると、次のように整理されています。
| 条件 | 事業区分 | 定款変更 |
|---|---|---|
| 常時保護を受ける者が20人以上 | 第二種社会福祉事業 | 必要(定款への記載が必要) |
| 20人未満の小規模で、 社会福祉事業と一体的に実施 |
公益事業に該当する場合あり | 不要となる場合もある |
自法人がどちらに該当するかは、利用定員や実施形態によって異なります。所轄庁への確認を早めに行うことをおすすめします。
サービス区分を新設すると、保育所本体との間で共通経費の配賦が新たに発生します。これが実務上もっとも手間のかかる部分です。
以下のような費目が共通経費として配賦の対象になり得ます。
| 費目 | 配賦基準の例 |
|---|---|
| 人件費(保育士等の兼務分) | 従事時間割合 |
| 水道光熱費 | 利用児童数割合・面積割合 |
| 消耗品費 | 利用児童数割合 |
| 建物減価償却費 | 面積割合 |
| 事務費(通信費・事務消耗品等) | 利用児童数割合・従事者割合 |
1. 年度当初に基準を文書化する
配賦基準は法人内部で一貫性を持たせる必要があります。年度途中で恣意的に変更すると、監査時に指摘を受けるリスクがあります。理事会や経理規程の中で配賦方針を明文化しておきましょう。
2. 合理的かつ検証可能な基準を選ぶ
「利用児童数割合」や「従事時間割合」など、数値の根拠を第三者が確認できる基準を採用します。保育士の勤務シフト表や利用実績を証拠書類として保管しておくことが重要です。
3. 月次で配賦を行い、年度末に集中させない
年度末に1年分をまとめて配賦すると、計算ミスや数値の不整合が起きやすくなります。月次決算のタイミングで配賦処理を行い、年度末の負担を軽減することを推奨します。
サービス区分の新設は、決算だけでなく予算編成にも影響します。
社会福祉法人会計基準第10条に基づき、サービス区分ごとに資金収支予算書を作成する必要があります。2026年度中に制度を開始した法人は、補正予算の作成が必要になる場合もあります。
次年度以降は、乳児等通園支援事業のサービス区分を含めた当初予算を編成しなければなりません。利用見込み人数や単価の設定、共通経費の配賦見込額を予算に反映させましょう。
ここまで見てきたとおり、こども誰でも通園制度の導入にともなう会計処理は多岐にわたります。
サービス区分の新設、共通経費の配賦計算、予算書の作成――これらをExcel等の手作業で行う場合、いくつかのリスクが考えられます。
社会福祉法人に特化した会計システムであれば、サービス区分の追加設定や配賦基準の登録、区分間の自動消去といった機能が備わっているものもあります。制度対応を機に、現在利用中の会計システムがこうした処理に対応できるかを確認しておくことをおすすめします。
2025年度は「地域子ども・子育て支援事業」として実施されていたため、簡便法による処理が認められていました。しかし2026年度からは「給付事業」に変更されており、サービス区分の新設と区分経理が必須です。前年度と同じ処理を続けると法令違反となる可能性があるため、速やかに対応してください。
受け入れ人数の多寡にかかわらず、内閣府令第31条に基づく区分経理の義務は適用されます。利用規模が小さくてもサービス区分の新設は必須です。
配賦基準そのものを届け出る義務は一般的にはありませんが、監査や実地検査の際に合理性を問われることがあります。配賦方針と根拠資料は法人内部で文書化し、いつでも説明できる状態にしておきましょう。
こども誰でも通園制度の会計対応について、実務上のアクションを整理します。
| 優先度 | アクション | 担当 |
|---|---|---|
| 最優先 | サービス区分「乳児等通園支援事業」を会計システム上に新設 | 経理担当 |
| 最優先 | 共通経費の配賦基準を決定・文書化 | 経理担当・園長 |
| 早期対応 | 定款変更の要否を所轄庁に確認(20人以上の場合) | 法人本部 |
| 早期対応 | 補正予算または次年度当初予算にサービス区分を反映 | 経理担当 |
| 継続 | 月次で配賦処理を実施し、証拠書類を保管 | 経理担当 |
制度開始直後の今だからこそ、会計処理の土台をしっかり整えておくことが、年度末の決算を円滑に進める鍵になります。
社会福祉法人の会計業務では、情報公開・法改正対応・区分管理など共通して求められる対応がありますが、注意すべきポイントは施設の種類によって異なります。保育・介護・障がい者施設では、それぞれ事業の仕組みや関わる行政・資金の流れが異なるためです。
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