人件費比率は、人件費をサービス活動収益で割って算出する指標です。WAMの2024年度決算分では、保育所の人件費率は71.5%で、収益の7割前後を人件費が占めています※1。分子に何を含めるかで数値は変わるため、平均値と比較する前に、自園の計算方法と定義を確認することが重要です。
人件費比率は、サービス活動収益に対して人件費がどの程度の割合を占めるかを示す指標です。保育所は配置基準に基づく職員配置が必要で、利用児童数が変化しても職員数を同じ割合で増減させることは容易ではありません。そのため、人件費比率は比較的高くなりやすい傾向があります。
したがって、比率が高いことだけで経営状態を判断するのは適切ではありません。収益規模や職員構成などとあわせて、現在の人員体制と収益のバランスの確認が必要です。行政への報告や経営分析で人件費の確認が必要になる場面もあるため、まず自園がどの定義で計算しているのかを明確にしておきましょう。
人件費比率は、次の式で算出します。
人件費比率=人件費÷サービス活動収益×100
重要なのは、単純に給与だけを計算するのではなく、どの科目を人件費として扱うかをそろえることです。WAMの経営分析参考指標では、人件費率を人件費と事業活動収入の関係から見る指標として扱っています。
分母は、事業活動計算書の「サービス活動収益」に計上される収益です。保育所では、委託費収入、補助金事業収入、利用者等利用料収入など、本来の保育事業に関連する収入が該当します。一方、施設整備等による収入やその他の活動による収入など、本業のサービス活動とは区分される収入を混ぜると、比率を正しく比較できません。
自園の事業活動計算書で、どの収益を分母にしているかを確認しましょう。
人件費には、職員給料、職員賞与、非常勤職員給料、法定福利費、退職給付費用などが含まれます。こども家庭庁の資料でも、狭義の人件費について「会計基準上の人件費、派遣職員費や法定福利費」の合計とする考え方が示されています。
| 科目区分 | 主な科目 | 人件費比率での扱い |
|---|---|---|
| 常勤職員 | 職員給料、職員賞与 | 含める |
| 非常勤・パート | 非常勤職員給与 | 含める |
| 法定福利 | 法定福利費 | 含める |
| 派遣職員 | 派遣職員費 | 定義を確認 |
| 退職給付 | 退職給付費用 | 含める |
注意したいのが派遣職員費、法人本部から按分される人件費、処遇改善等加算による支給分です。派遣職員費は、社会福祉法人会計基準では人件費の科目として示されています。制度上の人件費の定義を確認するときは、対象となる資料の定義を確認しましょう。
法人本部の人件費も、拠点への配賦方法によって見え方が変わります。また、処遇改善等加算についても、受給額と実際の支給時期を確認する必要があります。
つまり、自治体への報告で使う定義と、経営分析で使う定義が一致しない場合があります。数値を比較するときは、まず「何の資料に合わせた人件費比率なのか」を明示し、同じ定義の数値同士を比べることが大切です。
自園の数値は、WAM NETが公表する経営分析参考指標と照らして評価します。この資料は、福祉医療機構が貸付先から得た決算データをもとに、同種の施設の経営状況を分析したものです。
比較するときは、保育所と認定こども園を混同せず、自園と同じ施設類型の数値を見ることが基本です。また、定員規模、決算年度、地域による人件費水準などによって数値は変わるため、平均を上回っただけで問題があるとは判断できません。
平均から大きく乖離している場合は、まず収益側の算定漏れや計上方法、人員配置、科目の振り分けなどを確認します。実費徴収などの収益が適切に計上されているか、利用率の低下で分母が小さくなっていないか、職員配置が変化していないかを確認すると、原因を特定しやすくなります。
以下は、WAM「経営分析参考指標」2024年度決算分に基づく施設類型別の人件費率・経費率です。
| 保育施設の類型 | 人件費率 | 経費率 |
|---|---|---|
| 保育所 | 71.5% | 19.0% |
| 認定こども園(幼保連携型) | 69.4% | 18.0% |
| 認定こども園(保育所型) | 70.5% | 17.8% |
人件費比率は、職員構成と定員充足率によって変動。定員充足率が低下するとサービス活動収益が減り、人件費の額が変わらなくても比率は上昇します。
WAMでは、常勤職員の勤続年数や従事者数などを人件費率とあわせて確認できる指標として掲載しています。職員構成に変化があった場合は、人件費の推移も確認しましょう。
人件費比率の変化は、人件費削減だけで解決するものではありません。保育の質を支える人員体制を維持しながら、なぜ比率が変化したのかを構造として把握することが重要です。
人件費比率は年度末だけでなく、月次で確認すると変化を早く把握できます。給与データと会計データが分かれていると、人件費の確定や会計への反映が遅れ、月次の比率をすぐに確認できない場合があります。
拠点区分やサービス区分ごとに数値を確認できれば、どの事業で変化しているかを把握しやすくなります。前年同月比や予算比で追うと、WAMの平均値との比較だけでは分からない自園内の変化にも気づきやすくなります。
A. 定義によって扱いが異なります。どの資料の定義に合わせるかを先に確認し、同じ定義の数値と比較してください。
A. 一律の適正値はありません。WAMの経営分析参考指標など、同じ施設類型の平均値と比較し、収益構造や職員構成とあわせて判断します。
A. 人件費比率そのものが直接の減額要件にはならないケースが一般的です。ただし、処遇改善等加算の実績報告などで人件費の使途について説明を求められる場合があるため、所轄庁の取扱いを確認してください。
保育園の人件費比率を確認するときは、まず人件費とサービス活動収益の定義をそろえることが重要です。派遣職員費や処遇改善等加算など、扱いを確認すべき費目もあります。自園の計算方法を明確にしたうえで、WAMの同種施設の数値と比較し、乖離があれば収益・人員配置・科目区分などの要因を確認しましょう。月次で推移を把握しておけば、変化にも早く気づけます。
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