社会福祉法人の予算は、事業計画を数値で表した法人運営の基準です。事業計画に基づいて必要な収入と支出を見積もり、年度の運営方針を具体化します。
企業会計では予算作成が法令上必須とは限らない一方、社会福祉法人では予算の編成と適切な執行管理が求められています。モデル経理規程では、理事長が予算管理の単位ごとに予算管理責任者を任命する形が示されています。実際の担当者については、法人の規程や運用方法を確認する必要があります。
予算には、支出を適切に管理する執行統制、理事会・評議員会への説明、所轄庁への運営状況の説明といった役割があります。事業計画と予算を連動させ、実績との差異を確認することが重要です。
当初予算は、翌年度の開始前に拠点区分ごとに策定し、理事会の承認を得ます。
予算は拠点区分を単位として作成するのが原則です。勘定科目は大区分・中区分・小区分に分かれ、予算では所轄庁の指導等により小区分まで詳細に計上する場合があります。
複数の保育施設を運営する法人では、各拠点の予算を積み上げて法人全体の予算を作ります。法人本部で発生する共通経費は、あらかじめ定めた合理的な基準で各拠点に按分し、予算に反映します。
各園で作成した予算案を法人本部で集約・調整し、理事長が法人全体の予算案を策定します。その後、理事会の決議を経て承認を得る流れが基本です。定款の定めによっては評議員会との関係も確認する必要があります。
年度開始前に必要な手続きを終えられるよう、理事会や評議員会の日程を含めて早めにスケジュールを組みます。法人によって異なりますが、次のようなサイクルが考えられます。
| 時期 | 実施すること |
|---|---|
| 前年度中 | 次年度の当初予算を策定し、必要な承認手続きを行う |
| 当年度4月 | 新年度の予算執行を開始 |
| 当年度・年度途中 | 予算と実績の乖離を確認し、必要に応じて補正予算を検討 |
| 年度末まで | 必要に応じて補正予算を編成し、所定の承認手続きを行う |
予算と実績の乖離が法人運営に影響する規模になった場合、進行年度内に補正予算を編成します。
多くの法人では、半期を目安に実績の傾向を確認して第一次補正予算を検討し、2月または3月には年度末の着地見込みを踏まえて最終補正を検討します。ただし、実施時期は法人によって異なります。
補正予算は当該年度の進行中に手続きを行う必要があり、年度終了後に遡って補正することはできません。保育所や認定こども園では、児童数の変動や単価の遡及改定などが年度末近くに判明し、予算を見直すケースがあります。
当期資金収支差額がプラスの場合は、使途を定めた積立資産への積立や、必要な物品の購入などを検討します。一方、マイナスの場合は、積立資産の取崩しなどによる資金確保を検討します。
私立保育所では、前期末支払資金残高の取崩しについて3%の基準があり、これを超える場合は行政との事前協議が必要となるため注意が必要です。なお、すべての乖離で補正予算が必要になるわけではなく、法人運営に支障がない軽微な範囲であれば、補正を行わない判断もあります。
| 状況 | 検討すること | 注意点 |
|---|---|---|
| 資金収支差額がプラス | 積立資産への積立 | 積立支出と当期資金収支差額合計が事業活動収入計の5%を超える場合は、収支計算分析表の提出が必要になる |
| 資金収支差額がマイナス | 積立資産の取崩し | 私立保育所は前期末支払資金残高の取崩しに関する要件を確認 |
| 乖離が軽微 | 補正の要否を法人の規程等に基づき検討 | 判断根拠を残す |
保育施設の予算は、児童数と公定価格の変動に大きく影響されます。
年度当初の想定と実際の利用児童数に差があると、施設型給付費等の収入見込みが変わります。年度途中の入退園や年齢区分の変動も、収入だけでなく必要な職員配置や人件費に影響します。
公定価格等の単価改定では、年度後半に改定内容や遡及適用が判明することがあります。処遇改善等加算も受給額の確定時期によって当初予算との差が生じるため、確定後に人件費の見込みを見直します。
職員の採用・退職も人件費を左右します。採用難などで派遣職員の利用が増えれば、当初の支出計画から変動する場合があります。
さらに、遊具や設備の故障による修繕・更新費、新たな事業の開始による収支の変化も予算を動かす要因です。こども誰でも通園制度など新設事業では、必要な収入・支出を予算に反映することになります。
予算執行管理は、拠点ごとの執行率を月次で確認できるかどうかで精度が変わります。
予算額と実績額を同じ科目・単位で比較し、拠点区分やサービス区分ごとの執行状況を確認できる状態にしておくと、予算との差異を把握しやすくなります。複数施設を運営する法人では、本部で各拠点を横並びに確認できることも重要です。
法人本部の共通費を各拠点へ按分する場合は、基準に沿って効率的に処理できる仕組みを整えておくと管理負担を抑えられます。月次で執行率を確認すれば、補正予算を検討する際の判断材料も早く把握できます。
拠点ごとの予算執行管理や共通費の按分など、複雑になりがちな会計業務を効率化するには、自社の運用に合った会計システムの導入が有効です。施設形態や規模に合わせて選べるおすすめのシステムを紹介していますので、比較検討の参考にしてください。
A. 一律の数値基準はありません。法人運営に支障がない軽微な範囲であれば補正を行わない場合もあります。理事会で合理的に説明できるよう、判断根拠を整理しておきます。
A. 社会福祉法人では、拠点区分単位で作成するのが原則です。法人全体の予算は、各拠点の予算を積み上げて構成します。
A. 補正予算は進行年度中に策定する必要があります。年度終了後に遡って補正することはできません。
社会福祉法人の予算は拠点区分ごとに年度開始前に策定し、理事会の承認を得て執行します。年度途中は児童数や単価、人件費などの変動を確認し、必要に応じて補正を検討します。月次で拠点別の執行状況を把握し、差異の原因と判断根拠を整理しておくことが、適切な予算管理につながります。
本メディアでは、「保育・介護・障がい者施設」それぞれのの課題を解決するおすすめの会計システムを紹介しています。システム選びの比較・検討にお役立てください。


