社会福祉法人・保育施設の経理担当者にとって、「給食費」は毎月必ず発生する身近な費用でありながら、会計処理となると迷いやすい項目です。園児の給食材料費、副食費(ふくしょくひ=主食以外のおかず・おやつ代)、職員の給食費、保護者会が運営する私会計など、「給食費」という一つの言葉の中に性質の異なる複数のお金が混在しているためです。
本記事では、2026年10月時点で確認できた公的機関の通知・FAQをもとに、給食費会計の全体像を整理します。勘定科目の基本から、幼児教育・保育の無償化以降の副食費の扱い、外部委託時の按分(あんぶん=費用を合理的な基準で振り分けること)、指導監査で指摘されやすいポイントまで、実務の順序に沿って解説します。
「給食費」の会計処理で混乱が生じやすいのは、実際には性質の異なる3つのお金が「給食費」という同じ言葉でくくられているためです。本文に入る前に、まずこの3レイヤーを整理します。
施設が園児に提供する給食・おやつの材料費です。社会福祉法人会計では「給食費支出」という事業費区分の勘定科目で処理します。
幼児教育・保育の無償化(2019年10月開始)以降、副食費は保育料とは別建てで、保護者から実費徴収する費用として整理されています。会計上は「給食費支出」とは別の収入科目(利用者等利用料収入)として扱われる点が、レイヤー1と異なります。
保育士等の職員が園児と同じ給食を食べる場合の費用です。園児分とは別に「利用者等外給食収益」「利用者等外給食費支出」という専用の科目で処理する必要があります。
このほか、保護者会が独自に運営する「私会計」としての給食費会計が併存するケースもあります。これは社会福祉法人の決算書には含まれない、別建ての会計です。この違いについては後述します。
社会福祉法人会計基準に関する厚生労働省の通知では、「給食費支出」について次のように定義されています。
「食材及び食品の支出をいう。なお、給食業務を外部委託している施設又は事業所にあっては、材料費を計上すること」
ポイントは2つです。
給食費支出として計上できるのは、あくまで食材そのものの費用です。光熱水費や調理員の人件費は、それぞれ「水道光熱費支出」「人件費支出」など別の科目で処理します。
給食業務を外部の給食会社に委託している場合、委託料には材料費のほかに調理人件費・運搬費等が含まれているのが一般的です。このとき給食費支出として計上できるのは、委託料のうち材料費に相当する部分のみとされています。委託契約書や請求内訳で材料費部分が明示されていない場合は、給食会社に内訳の提示を依頼するか、合理的な基準(提供食数・提供量など)で按分する必要があります。この按分方法について、国のFAQ(よくある質問)では「平均的な食事の人数や提供量を考慮して按分するなど、合理的な方法によって算定する」という考え方が示されています。自法人の按分ルールが説明できる状態になっているかを、経理規程等で明文化しておくことが望まれます。
決算日時点でまだ使用していない食材(在庫)がある場合、本来は「給食用材料」等として貸借対照表に資産計上するのが原則です。ただし、金額的な重要性が乏しい場合は、重要性の原則に基づき計上を省略できるとされています。毎月の在庫量にばらつきが大きい施設は、決算前に在庫の棚卸を行い、計上の要否を判断する体制を整えておくとよいでしょう。
2019年10月の幼児教育・保育の無償化以降、副食費の会計処理は特に問い合わせの多いテーマです。制度の経緯を踏まえて整理します。
内閣府・厚生労働省が連名で発出した通知「幼児教育・保育の無償化に伴う食材料費の取扱いの変更について」(府子本第219号、2019年6月27日)では、2号認定子ども(保育所等を利用する3〜5歳児)の副食費について、従来の公定価格における積算額を踏まえ、「この月額4,500円を目安とする」とされています。あくまで「目安」であり、各施設が独自に額を設定すること自体は可能ですが、実務上はこの金額を基準に設定している施設が多数です。
同通知および関連通知では、以下の世帯の副食費が免除(市町村が施設に加算として支払う)対象とされています。
副食費の会計処理で特に注意したいのは、同じ「副食費」という収入の中に、性質の異なる2種類の入金が混在する点です。
両者は資金の出どころが異なるため、法人内の管理表(補助簿)レベルでは分けて把握しておくことが望まれます。なお、免除対象者分の加算額が在籍日数等に応じて按分される仕組み自体は公的資料で確認できますが、具体的な按分の計算式を本文で断定的に示すことは控えます。実務上の按分ルールは、こども家庭庁が公表する「公定価格に関するFAQ」の最新版で、自法人の認定区分(1号・2号)に対応する項目を確認することをおすすめします。
2024年10月の児童手当制度の拡充により、児童手当における「第3子以降」のカウント対象となる年齢の上限が、18歳年度末から22歳年度末まで広がりました。この改正はあくまで児童手当の算定基準に関するものであり、2026年10月時点で、この改正に伴って副食費免除における第3子以降のカウント基準(1号=小学校第3学年修了前、2号=小学校就学前)が変更されたことを示す公式な発表は確認できませんでした。両制度の「第3子」の数え方は別の基準として運用されている点に注意してください。
保育士等の職員が、休憩時間等に園児と同じ給食を食べる園は少なくありません。この場合、園児分の費用と混同しないよう、職員分は専用の科目で処理する必要があります。
職員から給食費を現金で預かる場合は「現金・預金/利用者等外給食収益」、給与から天引きする場合は「諸口/利用者等外給食収益」として処理するのが一般的な実務です。
職員分の給食材料費は「利用者等外給食費支出」という、園児分の「給食費支出」とは別の科目で処理します。厚生労働省の通知でも、利用者等外給食費支出は「職員、来訪者等利用者以外に提供した食材及び食品の支出」と明記されています。決算書上は、職員から預かった給食費収入と、職員分として支出した給食費がおおむね同額になるのが通常です。大きく乖離している場合は、処理の見直しが必要なサインといえます。
園によっては、保護者会・父母の会が独自に給食費・おやつ代の一部を徴収・管理しているケースがあります。これは社会福祉法人としての決算書には含まれない「私会計」であり、法人会計上の「給食費支出」とは明確に分ける必要があります。
私会計の資金を法人の口座と同じ口座で管理してしまうと、指導監査において「法人の資金と私的な資金の区分が不明確」という指摘を受けるリスクがあります。保護者会運営の給食費会計がある場合は、口座・帳簿を法人会計と完全に分離し、法人の経理規程にもその旨を明記しておくことが望まれます。
給食費に関連して、指導監査でよく確認される観点を整理します。
いずれも「給食に必要な栄養量等、日常生活に必要な諸経費が確保されていること」という委託費の適正執行の考え方に関わる項目です。日々の記帳の段階で科目を迷わず振り分けられる仕組みを整えておくことが、指導監査対応の負担軽減にもつながります。
ここまで見てきたとおり、給食費会計は「給食費支出」「利用者等外給食費支出」「副食費(利用者等利用料収入)」といった複数の科目を、日々の取引ごとに正しく振り分けていく実務です。特に外部委託時の材料費按分や、副食費の免除対象者分・実費徴収分の区分は、手作業の仕訳だけでは属人化しやすく、担当者の異動時に処理方法が引き継がれないリスクもあります。
社会福祉法人会計基準に対応した会計システムの多くは、あらかじめ「給食費支出」「利用者等外給食費支出」等の勘定科目がテンプレートとして用意されており、按分計算を自動化できる機能を備えているものもあります。どの程度まで自動化できるかはシステムによって差があるため、自法人の給食運営の形態(直営か外部委託か、職員給食の有無など)に合わせて、各製品の機能・サポート体制を比較検討することをおすすめします。
本メディアでは、「保育・介護・障がい者施設」それぞれのの課題を解決するおすすめの会計システムを紹介しています。システム選びの比較・検討にお役立てください。


